きっちーさん的良楽曲 その2

きっちーさん的良楽曲 その2

~2014年

自室テレビの録画機能を手に入れて毎日のようにアニメを見ていた時期。

いわゆるキャラクターソング(声優さんがキャラクター名義で歌唱する曲)にハマっていたことが明らかにわかる。

 

 

12ヶ月/鈴木結愛(CV.西明日香)、佐藤陽菜(CV.明坂聡美)、高橋葵(CV.荻野可鈴)、田中心春(CV.大橋彩香

作詞/井上純一

作曲/井上純一

編曲/Hajime(from LiLi)

12ヶ月

12ヶ月

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てさぐれ!部活もの」ED曲。OP、本編とふざけ倒しているのに、EDではど直球のバラード。高校1年から3年が在籍している部活動のその部員と過ごせるのは1年間しかない、という急に本質を突くあたり、コメディとの対比が上手い。

曲自体音域がかなり広く、サビでは下ハモしかやらない人もいるくらいだが、そのディレクションも相まってアニメソングのレベルを上げる完成度が高い楽曲だと感じる。

 

 

キラキラBaby×Baby/高橋葵(CV.荻野可鈴)、宇佐美陽菜(CV.小松未可子

作詞/井上純一

作曲/井上純一

編曲/Hajime(from LiLi)

キラキラBaby×Baby

キラキラBaby×Baby

  • provided courtesy of iTunes

てさぐれ!部活もの すぴんおふよりキャラクターデュエットソング。軽快なロックにのせたどこか懐かしさを感じる楽曲。てさぐれ!を含む石ダテ監督作品の殆どの楽曲を井上純一氏が作詞作曲しており、シンガーソングライター名義である大友ジュンのブログで作成した楽曲の意図や背景を丁寧に解説してくれている。

 

 

キルミーのベイベー!/やすなとソーニャ(CV.赤崎千夏田村睦心

作詞/藤本功一

作曲/EXPO(山口優松前公高

編曲/EXPO(山口優松前公高

キルミーのベイベー!

キルミーのベイベー!

  • やすなとソーニャ(cv:赤﨑千夏・田村睦心)
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

まさにアニメ史に残る名曲。意味がわからないし意味はない。この曲が曲として成立するためにはアニメのテーマソングという背景が不可欠だし、逆に言うとアニメソングでしかできないことをやった素晴らしい作品。この曲が収録されたアルバムには「キルミーのベイベー!のさらにウザいやつ」「キルミーのベイベー!2062」なども収録されており、この曲だけで闘う、まさにミリオンヒットを記録した大物のようにも感じる(一発屋とも言える)

 

 

Square Panic Serenade/高鴨穏乃(CV.悠木碧)、新子憧(CV.東山奈央)、松実玄(CV.花澤香菜)、松実宥(CV.MAKO)、鷺森灼(CV.内山夕実

作詞/ZAQ

作曲/ZAQ

編曲/ZAQ

Square Panic Serenade

Square Panic Serenade

  • provided courtesy of iTunes

サビから入ったりセリフが入ったり、キャラクターソングの王道みたいな構成の曲。

サビのメロディ遷移がとても好き。

 

 

ファールプレーにくらり分島花音

作詞/分島花音

作曲/分島花音

編曲/千葉"naotyu-"直樹

ファールプレーにくらり

ファールプレーにくらり

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分島氏の楽曲はストリングスが美しい。この曲は組曲の如く曲調も変化し、複雑だけれどポップでキャッチ―。サビの高音が伸びやかで気持ちいい。

 

 

君の神話~アクエリオン第二章~/AKINO with bless4

作詞/Gabriela Robin

作曲/菅野よう子

編曲/菅野よう子

君の神話~アクエリオン第二章

君の神話~アクエリオン第二章

  • provided courtesy of iTunes

アクエリオンEVOLのOP。「創聖のアクエリオン」が有名なのであまり目立たないが、それよりも明るい曲調で、この曲もサビの爽快感があるので聴き心地がとても良い。

 

 

staple stable戦場ヶ原ひたぎ(CV.斎藤千和

作詞/meg rock

作曲/神前暁

編曲/神前暁

staple stable(化物語)

staple stable(化物語)

  • provided courtesy of iTunes

キャラクターソングとして秀逸すぎる。声優さんによる歌唱、メロディ、歌詞、編曲、どれもがうまく噛み合って、物語がどうなるのかワクワクさせるOP曲として完成度が高い。

 

 

恋愛サーキュレーション/仙石撫子(CV.花澤香菜

作詞/meg rock

作曲/神前暁

編曲/神前暁

アニメソングにラップを使う手法のパイオニアはこの曲か、田村ゆかり氏の「You&Me」か、だと思っているが、アプローチが異なっていて、「You&Me」では王道アニメソングにmotsu氏によるカッコいいラップを組み込んだギャップが面白かった。対して恋愛サーキュレーションは、洋楽のようにループしたトラックにメロディを載せており、しかしキャラクターソングであるので歌唱する声は可愛く、故に単調にならないというアニメソングに新たな可能性を広げた曲。

 

 

これからのSomeday/μ's

作詞/畑亜貴

作曲/yozuca*

編曲/lotta

おそらくラブライブ!沼にハマった原因の曲。グループ曲でわりと大きな要素として、聞いただけで声の聞き分けができるか、があると思っているのだけれど、当時全く知らなかった声優さんたちのグループであったのに声の聞き分けが容易で、各々声にしっかり特徴があり、キャラクターに合っている。この状態になると、他の曲や新曲を聞いても誰がどこを歌っているかもわかるようになって聞きやすくなるしハマりやすくなる。ラブライブ!にハマった他の要因としては、そんな感じでアニメに興味を持った時に、アニメ化以前にリリースされた曲30曲超をほぼ全て収録したアルバムが出たことだ。掘れば掘るほど知らない過去とかいい曲とか出てくるんだから、オタクはこういうのに弱いんだなぁ。

 

 

そこらの着ぐるみの風船と私/Velvet.kodhyとVelvet.kodhyとμとμ

作詞/山崎真吾

作曲/山崎真吾

編曲/山崎真吾

 

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!のある回にだけ使われた特殊ED。2人4役で、男男、男女、女男、女女の全ての組み合わせでデュエットするパートがあり、誰が主旋律で誰がハモリかがどんどん変わる構成が面白い。純粋にメロディがめちゃめちゃ優しくてキレイ。落ちサビの盛り上がりとそこからの締め方で切なさも大きい。

 

 

Get music!/蓮城寺べる(CV.戸松遥

作詞/三重野瞳

作曲/山原一浩

編曲/山原一浩

Get music!

Get music!

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プリティーリズム第3シリーズのレインボーライブより。この曲を歌うキャラクターが厳しい家庭で育ち満点、1位でしか認められないというコンプレックスを抱えた少女なのだが、その少女が自分の殻を破るエピソードがあり、その回前後で曲の聞こえ方が全く違うというギミックが秀逸。緊張感や緊迫感、その背後に見える孤独感を曲に落とし込んでおり素晴らしい。

 

 

アル二村 ホーム・アル二村 アナザー/クロノ・クロス オリジナル・サウンドトラック

作曲/光田康典

編曲/光田康典

アルニ村 ホーム

アルニ村 ホーム

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アルニ村 アナザー

アルニ村 アナザー

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小中学生時代に多大に影響を受けたゲーム、クロノ・クロスの主人公の暮らす村のBGM。ゲームのあらすじをざっくり語ると主人公がひょんなことからパラレルワールドに迷い込んでしまい、元いた世界とよく似ているが、その世界では主人公は10年前に死んでいた…という事実を知るところから物語は動き出す。

BGMは同じメロディであるのに、主人公の元々いた世界では明るく、主人公の亡くなっている世界では暗めのアレンジになっている。ワールドマップや他の街でも同様にBGMの異なるエリアが多く存在し、この物語の主軸をBGMという側面から大きく支えている。

全体を通して、民族楽器を多用したエスニックな曲調と繊細な主旋律が綺麗に噛み合い非常にクオリティの高いサントラになっている。そのためサントラがそこそこ人気でもあり欲しくても手が出せなかったのだが、高校時代に友人がこれを買ったと、聞き貸してもらった。大学受験期はこのサントラに非常にお世話になったなぁ。

 

 

憩いの街角/交響組曲ドラゴンクエストエデンの戦士たち」オリジナル・サウンドトラック

作曲/すぎやまこういち

編曲/すぎやまこういち

 

ドラクエはⅠ~Ⅷまではプレイしたのだが、私が一番好きな作品であるところのドラクエⅦのサントラから、序盤の街のBGM。Ⅶは町や村ごとにエピソードがあり、基本的には新たな土地へ向かいその土地の問題を解決することを繰り返して世界を救っていくのだが、ドラクエⅦの本質的な部分では悪さをするまものを倒せば問題が解決する、といったように上手くいかないことが多く、人間同士の争いやエゴが絡むせいで、結果的に報われなかったまま終わる不条理なエピソードも多い。曲名「憩いの街角」のように聴くと爽やかで暖かい曲ではあるが、プレイしてから聴くとどこか切なさやもの悲しささえ感じられる。

今思えばドラクエⅦ(現在と過去)、ドラクエⅥ(現実と夢)、クロノ・クロスパラレルワールド)のように同じ形状のマップを用いたゲームにハマる傾向があった。以前は容量もそこまで大きくないため、少ない容量で多くのストーリーを組み込む手法としていくつか見られたが、ストーリーだけでなく、似て非なる世界を異なるBGMで表現し、今がどの世界にいるかを感じさせる手法が好きなのかもしれない。

 

 

My Dear/シロクマ(CV.櫻井孝宏

作詞/紗希

作曲/紗希

編曲/紗希

My Dear

My Dear

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しろくまカフェは毎月EDのキャラクターソングが変わり、最終月のEDが満を持して主人公のシロクマくんの楽曲であった。4クールの最後に今まで楽しかったなぁ系の曲聞くのが弱い。

 

 

秘密と花園/恋塚フルーネティ(CV.西木野真姫(CV.Pile))

作詞/畑亜貴

作曲/原田篤(Arte Refact)

編曲/fandelmale(Arte Refact)

秘密と花園

秘密と花園

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ラブライブ!のキャラクターが声優を務めるというコンセプトのあるゲーム「神様と運命革命のパラドクス」より。

まず楽曲のクオリティが高い。Bメロで盛り上がった後のサビの入りが下がるとことから始まる違和感で興味を惹かれ、全体的に音域の狭い曲であるのにその絶妙なメロディ遷移で全く飽きさせない緊張感がキャラクターソングとは思えないクオリティ。

 

 

その3へ続く…

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きっちーさん的良楽曲 その1

このアーティストが好き、というのは実はほとんどない。が、この曲が好き、というものは多くある。

 

さらに自分にハマる曲と出会うと狂ったように一日中(どころか丸一週間の時もあるくらい)同じ曲を延々とリピートしてしまう癖もある。

 

なので自分にハマった曲を列挙すると、ハマった当時の様子であったり曲と出会った経緯であったり、人生の片鱗を思い出す。

 

今回は日記やメモ書きのように、過去にハマった曲を記していきたいと思う。

 

きっちーさん的良楽曲その1

〜2011年

主に中高生時代、初めて音楽を聴くようになったり、アニメにハマったりな時期。

 

 

 

COSMOS vs ALIENやくしまるえつこ 

作詞/ティカ・α

作曲/ティカ・α

編曲/近藤研二

COSMOS vs ALIEN

COSMOS vs ALIEN

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初めて見たいわゆる深夜アニメというものが荒川アンダーザブリッジ2期だった。

ボーカル、曲調、諸々が自分の中には無いものだらけで、しばらく脳裏から離れなかった。

 

 

学級崩壊/相対性理論

作詞/真部脩一、ティカ・α

作曲/真部脩一

編曲/

 

やくしまるえつこ氏をもっと知ろうと調べているときに遭遇。すぐに相対性理論というバンドのボーカルがやくしまるえつこ氏であると知った。

学級崩壊進行中という言葉で始まる曲に、初めて聞いた時は「こんな曲があるのか…」と衝撃を受けたことを覚えている。

理論のその他の曲調や歌詞の独特の癖が突き刺さり、しばらく延々とリピートしていた。人生で初めて買ったCDも相対性理論のアルバム(シフォン主義、ハイファイ新書、シンクロニシティーンの3枚)であった。

 

 

入り鉄砲に出女/タルトタタン 

作詞/西浦谦助

作曲/真部脩一

編曲/

入り鉄砲に出女

入り鉄砲に出女

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相対性理論の情報は定期的に調べていたのだけれど、楽曲を作っていた真部氏と西浦氏の脱退はかなりショックだった。その後すぐに2人がタッグを組んでプロデュースしたユニット、タルトタタンがデビューした。可愛い中に不思議な雰囲気を持つ曲が多く、特にこの曲は間奏が全く無い構成に歌詞のストーリー性が相まって、気が付いたら聞き入ってしまう。

 

 

IN MY DREAM/真行寺恵里

作詞/真行寺恵里

作曲/真行寺恵里

編曲/伊藤真太郎

IN MY DREAM

IN MY DREAM

  • 真行寺 恵里
  • アニメ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes 

もともとスパロボのBGMで知ったが、サビのメロディが好きすぎた。原曲を聞いたときは落ちサビの転調含むその音域の広さと間奏の肉声ギター音が凄すぎて引いた。

 

  

へミソフィア/坂本真綾

作詞/岩里祐穂

作曲/菅野よう子

編曲/菅野よう子

ヘミソフィア

ヘミソフィア

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この曲もスパロボで知った。MXでのへミソフィアのBGMが主旋律をバイオリンのような弦楽器でアレンジされていてめちゃカッコいい。落ち着きと盛り上がり、静と動の対比が素晴らしすぎる。若干の不安を持たせるような曲の締めが秀逸。菅野よう子氏の凄味が詰まっている気がする。

 

 

おなじ話/ハンバートハンバート

作詞/佐藤良成

作曲/佐藤良成

編曲/ハンバートハンバート、上野洋

おなじ話

おなじ話

  • ハンバート ハンバート
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

何で知ったか覚えてないけど、初めて聞いたときは、優しい歌声であるからこその悲しさとか儚さに包まれた。無音に意味や文脈を持たせていて文学的だし、詞が曲に載る必要性がこれほどあると感じることも珍しい作品。

 

 

incl./meg rock

作詞/meg rock

作曲/meg rock

編曲/ 加藤大祐

incl.

incl.

  • provided courtesy of iTunes

音域の広さが凄い。その歌声で包み込んでくれそうにさえなる。

 

 

ガチャガチャへるつ・ふぃぎゅ@ラジオ/MOSAIC.WAV

作詞/み〜こ

作曲/山頭水

編曲/柏森進

きっちーさん的電波ソングのルーツ。ふぃぎゅ@メイトも好きだけど、こっちの方が耳に残るワードとメロディの強さがあって好き。

 

 

Taste of Paradise/喜多村英梨

作詞/大森祥子

作曲/山口朗彦

編曲/山口朗彦

Taste of Paradise

Taste of Paradise

  • provided courtesy of iTunes

なんかわからんけどめっちゃ聴いてた。

 

 

つまさきだち/伊藤かな恵

作詞/坂井季乃

作曲/黒須克彦

編曲/黒須克彦

つまさきだち

つまさきだち

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ごちゃごちゃしたOPとかイかれた(褒めてる)アニメ本編とは違ったストレートな歌詞のギャップにやられる。背の低い伊藤かな恵氏が歌うからこそ生まれる文脈と青春のような爽快感のあるメロディが気持ちいい。

 

 

ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C/ヒャダイン

作詞/前山田健一

作曲/前山田健一

編曲/前山田健一

youtu.be

目まぐるしく変わる曲調、男女の掛け合い、ハモり、その全てが気持ちよくて、アニメOP映像も相まって物凄い中毒に襲われた。MVのせいもあってか、初めて聞いた時は男女で歌っているものだと思っていたけれど、そうではないと知ったときは混乱したし、理解したときは不思議な感覚に陥り、ヒャダイン氏の制作した楽曲を聞き漁るようになった。前山田健一ヒャダインというカミングアウトが当時話題になり、テレビなどメディアでもよく見かけた。この頃から、ももクロなども聞くようになった。

 

 

PUPPY LOVE!!/ゆいかおり

作詞/前山田健一

作曲/前山田健一

編曲/前山田健一

PUPPY LOVE!!

PUPPY LOVE!!

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youtu.be

予備知識なしに聴いて、これはもしやヒャダイン氏提供では…と思い、案の定その通りだったヒャダイン色バリバリの曲。確かに癖がかなり強い部類ではあると思うけど、曲を聴いて誰が作ったかわかるという経験はこの時が初めてだった気がする。MVがめちゃくちゃにかわいい。

 

 

面影ワープnano.RIPE

作詞/きみコ

作曲/佐々木淳

編曲/nano.RIPE

面影ワープ

面影ワープ

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youtu.be

爽やかで夏っぽい青春ど直球の曲。ただ、夏や青春の渦中だけでなく、後半は夏の終わりを感じさせる儚さと懐古を感じさせてくる。寂しさを含んだ青春ソングはだいたい好き。ずるい。花咲くいろはは人生でもトップクラスで思い出の作品の一つなので思い出補正も込みまくり。

 

 

Dream Goes On/春音あいら(CV.阿澄佳奈

作詞/池畑伸人

作曲/長岡成貢

編曲/長岡成貢

Dream Goes On

Dream Goes On

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 後の人生に大きな影響を与えるプリティーリズムシリーズの骨格となる曲。もう曲というよりアニメ本編の内容になるけれども、主人公が「夢が無い」いつでも周りの誰かをサポートする側に回ってしまうような控えめな少女で、夢を見つけて叶える話なのかなと思いきや、最後までこの主人公は周りのサポートをし続けたという女児向け販促アニメの構成として驚いた。(監督曰く女児向けではなく”人間向けアニメ”だそうだが)

そんな主人公がこの曲を歌うことに意味を持たせる4クールであった。人類は是非プリティーリズム・オーロラドリームを観てほしい。

 

その2へ続く…

kitchysun.hatenablog.com

 

 

タキサイキアという楽曲

タキサイキア現象とは、交通事故など危機に陥った時に全てがスローモーションに感じる現象のこと。ギリシャ語で「頭の中の速度」の意

タキサイキア現象 危機的状況でスローモーションに感じる謎を解明|アンビリバボー

2010.11.11

 タキサイキア現象、耳馴染みが無いかもしれないが、上記の説明を読めば腑に落ちた方も多いのではないかと思う。同タイトル「タキサイキア」という楽曲が2018年にリリースされた。歌っているのはCYNHN(スウィーニー)という6人組ボーカルユニット、実に3枚目のシングル曲となる。

 私はこの"タキサイキア"を初めて聞いた時、CDを初めて手にして歌詞を読んだ時、楽曲のMVを初めて観た時、何度も衝撃を受けた。何故それ程までに衝撃を受けたかはよくわからなかったが、しかし何故か気がついたらどんどんと引き込まれていた。

 今回は楽曲が初めてお披露目となった日から約1年、改めてこのタキサイキアという楽曲に向き合おうと思う。

 一応注釈しておくが、この文章の9割は私の主観で構築してあるので解釈違いを起こしても叩かずにそっとページを閉じて頂きたい。

 ちなみに私がこれから話す内容を読んでいる時に時間が経つのが長く感じたのなら、それはタキサイキア現象ではなく、”時間の無駄”である。

music.apple.com

 

1.タキサイキアの背景


 タキサイキアはCYNHNの3rdシングルに収録されている楽曲である。CYNHNはロシア語で青色を意味しており、その青には、まだまだ未熟、成長途中、といった意味も込められている。2017年にデビューして以来、成長は目覚ましく、2018年夏にリリースされたタキサイキアはCYNHNにとって初めての大型の夏フェスを共に闘う大きな武器となった。

 

 青春の1ページのように、短い期間に多くの経験をし、環境が急激に変わっていく様がスローモーションに見える、という今のCYNHNの状況を歌ったものでもある。


 CYNHNは3rdシングル、4thシングル、5thシングルにそれぞれ2曲ずつ、メインボーカル制を導入した。メインボーカル制というのは、6人全員で歌うが、その中の1人の歌唱パートが多い、目立つ部分が多いなど、メンバーの1人をフィーチャーした楽曲を全員に回していく、というものだ。

 

 このタキサイキアはそのメインボーカル制の第1弾であり、メインボーカルは綾瀬志希(あやせしき)(以下、敬称略)が努めた。綾瀬は3rdシングルのタキサイキアとSo Young(青柳透のメインボーカル楽曲)の振付も考案した。

 

 以下にはタキサイキアリリース時の宗像明将氏によるCYNHNのインタビュー記事を載せた。私が記している駄文を読むよりか幾分有意義な内容を含んでいるので、是非読んでみてほしい。 

 

realsound.jp


2.タキサイキアの音楽


 私がタキサイキアに引き込まれた1番の要因が、この作編曲にあると考えている。全体を通して、軽快な管楽器、ピアノや笛のアクセントが印象的だ。曲の構成としては、Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Cメロ→間奏→Bメロ→サビ という流れになっている。

 

 ここで声を大にして言いたいのが、間奏終盤で鍵盤を連打しつつ音階が段々と上がっていく切迫感の後、待ちきれんばかりに歌唱する部分がBメロである、ということだ。

 

 この曲のBメロにはサビかと思わせるようなメロディの強さがある。一般的にはBメロはサビに向けて盛り上がっていく部分で、それに比べると非常に攻めた作りだ。しかし、1番のBメロと間奏後のBメロを聴き比べると、その違いははっきりとわかる。

 同じメロディであるが間奏後のBメロにはサビを思わせるような高音の管楽器など編曲が全く異なり、それ故に間奏後のBメロはまるでサビのようにさえ感じられる。その仕掛けにより、その後に待ち受ける最後のサビは盛り上った上にさらに盛り上がる、という、まるで限界突破のようなボルテージの高まりを生み出している。


 さらには最後のサビではただBメロよりも盛り上がるだけでなく、サビが終わるかと思いきやフレーズを繰り返し、その後少し落ち着かせて終わりへと収束していく儚さも描いている。楽しい時間は決して永遠ではないという思いにさえさせられるのである。

この仕掛けこそが、楽曲が人を魅了する1番の要因なのでは無いだろうか。


 ちなみに、この展開が読めず、サビのように強いBメロを持つという点で類似していると感じるのが『脳裏上のクラッカー/ずっと真夜中でいいのに。』だ。関ジャム完全燃SHOW(テレビ朝日)の「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年間ベスト10」という企画で蔦谷好位置氏が挙げていた楽曲である。(2019.01.20放送)

 この放送を見てタキサイキアの衝撃の理由に1つ近づいたような気がした。

 

3.タキサイキアの歌詞


 タキサイキアの曲の軽快さに対して、歌詞は決して明るく軽快ではない。むしろ非常に痛々しいとすら感じる。ただし、曲と歌詞がマッチしていない、ということではなく、むしろそれが非常に密接に関わっているのである。


 タキサイキアの歌詞には"今日が何ページかわからず""泣いて""綺麗じゃないけど""大嫌いでも"など幾度もネガティヴな言葉が登場する。しかし全体を通して聞くと後ろ向きな曲ではなく、目まぐるしく変化する状況に戸惑いながらも手探りで少しでも前に進もうとする、微かな光を掴みに行こうとするような前向きな歌詞である。


 何度も言うが、タキサイキアは急激な変化に対して脳が追いつかず視界がスローモーションに見える現象を意味する。歌詞中にもスローモーションという単語が出てくるが、その部分だけでなく、全体を通してCYNHNの心境をタキサイキア現象に例えて歌っている。

 明るい曲調であるが、"夜が明けたら神様まで声届くくらい""夜明けを待つだけ"から分かるように、この曲の時間軸は夜中であり、つまり、ここからもタキサイキアは"跳ねる曲"ではなく、"跳ねるために努力している期間の曲"だと考えられる。こじつけではあるが、その色眼鏡を掛けた上で改めて歌詞を読むと、

 

泣いて泣いて泣いて抗って
綺麗じゃないけど きっと書き上げてます
ダークホースばっかの名作
後世に 渡って掻き鳴らせ

 

 この部分から、ひたむきで荒削りな努力は決して完璧とは言えないがいつか陽の目を見ると信じて進み続けよう、という熱意すら感じられる。

 作詞作曲を担当した渡辺翔氏はこの曲だけでなく、CYNHNの1stシングル、2ndシングルを含む数多くの楽曲を手掛けており、グループやメンバーのことを理解しているからこそ生み出せる歌詞なのではないだろうか。

 

4.タキサイキアのMV


 タキサイキアのMusic Video(MV)はドラマ仕立ての演出となっている。というのも、上記で触れたメインボーカル制と同時並行で行われたプロジェクトがあり、それが"演じまCYNHN"である。

 これはメインボーカルを担当したメンバーが、そのMVの主人公となり、それぞれの葛藤を乗り越えるストーリーを演じる、というものである。内容は全てフィクションであるが、本人とのインタビューを元に作られたストーリーであり、現実の本人の過去や葛藤と重なる部分もあるそうだ。

 

twitter.com

 

 タキサイキアのMVの大まかなストーリーを以下に示す。


 主人公である綾瀬志希は女子高生で友達がいない。歌が好き。同じクラスの女子学生から(本人に聞こえるように)陰口を言われるなどいじめを受けていた。

 ある時同じ学校の学生である百瀬怜に"綾瀬さんの歌、好きなんだ"と話しかけられ、それをきっかけに仲良くなり、よく2人で過ごすようになる。しかし、しばらくしていじめっ子らに、根も葉もない嘘を吹き込まれ疑心暗鬼になった綾瀬は手を差し伸べてくれた百瀬を突っぱねて殻に閉じ籠ってしまう。

 部屋に閉じこもったまま、薄暗い部屋で、百瀬の声が流れるラジオを聴きながら、このままじゃだめだ…と呟くシーンでこのMVは幕を閉じる。

 

www.youtube.com

 

非常に救いの無い話である。MV自体はこのストーリーパートと、学校の屋上でCYNHNの6人が歌っている姿が映される歌唱パートが入り混じっているが、歌唱パートでは暗い話とは全く違う映像作品であるかのように爽やかで笑顔のメンバーが映されている。だからこそ、より一層ストーリーパートの深刻さが際立たされており、歌唱パートでの綾瀬の弾けるような笑顔にすら、胸を締め付けられるように感じられる。


 タキサイキアMVのストーリーの続きはCYNHNの5thシングルに収録されているwire(百瀬怜のメインボーカル楽曲)のMVで描かれている。綾瀬が百瀬を突っぱねるシーン以降を百瀬視点で描いたものだが、この結末においても、未だ完全な復縁は達成されていない。2019年9月のライブにおいて、演じまCYNHNシリーズの完全版を公開するという情報もあり、この先の展開が気になるところである。

 

5.タキサイキアのライブ


 音楽の項で間奏以降の展開について触れたが、ライブ会場におけるタキサイキアのボルテージの高まりの要因はそれだけではなく、歌詞割、振付、演出による相乗効果も含まれる。

 

5.1 歌詞割


 間奏以降、メインボーカルである綾瀬が歌唱するパートは1番最後の"青すぎる奇蹟"というフレーズを除くとサビでマイクを持たないのである。逆に間奏後のBメロは全て綾瀬が担当している。だからこそ間奏後のBメロに魂の籠った声量と綾瀬のエモーショナルな歌声が相まって圧倒的な力強さも感じる。その点も加味され間奏後のBメロがまるでサビであるかのように感じるのである。


5.2 振付


 背景の項で軽く触れたが、タキサイキアの振付は綾瀬が考案したものである。Aメロの笛の音をきっかけに動きがスローモーションになるところや、初見でも一緒に楽しめるクラップが多く盛り込まれているところが印象的だ。

 

 また最後のサビ後半では手を左右に振り、もうすぐ曲が終わってしまうという儚さも相まってエンディング感を上手く演出している。振付で特に注目して欲しい部分は"振付の無い部分"である。1番サビ後半や間奏の後半、最後のサビは全てに振付が無く、各々が自由に動いている。CYNHNの楽曲の中でもここまで自由な振付の曲は珍しい。タキサイキアお披露目時に綾瀬はこのようなことを言っていた。

 

 音楽という文字通りみんなで音を楽しみたいから、振付はみんなで出来るクラップを取り入れたり、敢えて決まった動きではない自由な部分を作ったりした。CYNHNのメンバーはみんな真面目だから自由に動いてって言われると上手く出来なくて、もっと気楽に楽しんでくれればいいのになと思っていた。(一部改変)

 

 現在ではメンバーみんなが良い意味で肩の力が抜け、本当に楽しそうに踊っている姿が見られる。特にこの"自由に動く部分"にはそれを見た時の場所、時間、状況、心境で異なる"今"を感じ取ることが出来る。ふいに、これも綾瀬の求めていた音楽の一つなのだろうかと考えることがある。

 

cheerz.cz


 綾瀬は音響の専門学校を出た後、音楽とは離れたところに就職するも、歌を歌いたいという夢を諦めずオーディションに参加し現在に至る。彼女の歌唱する姿を見たことがある人は、彼女の音楽に対する並々ならぬ熱量を感じたことがあるだろうと思う。技量だけでなく、楽しそうに踊り歌う姿に魅了されるのである。


5.3 ライブにおける演出


 ライブ中のタキサイキアには一体感がある。その理由はいくつもあるが、例えば、初心者でも楽しめるクラップだ。フェスやショッピングモールなどのイベントで、この曲を知らず立ち寄った人でも音楽に参加出来る、という構図がある。ファンも楽器の一部として音楽と一体化することが可能であるために、会場内の一体感が生まれる。

 

 他には、コーレス(コール&レスポンス)がある。いくつかのライブでは「モンダイナイ モンダイナイ」の部分の後半をファンが返すように要求される。俯瞰的に見ればよくありそうなコーレスであるが、改めて立ち返って見てみると、この"モンダイナイ"の部分は壁に当たってしまい立ち止まった夜中に自分に言い聞かせている歌詞である。音源での歌詞割ではここは綾瀬のソロパートでもある。

 その部分をレスポンスとして返す、ということこそが、その次の歌詞"君がいるから さぁ さぁ ここからだ"へと繋がるのだ。そう、モンダイナイのである。つまり、ライブでのコーレスは音源版とは異なるルート分岐を生む文脈を示している。


 間奏後のBメロである綾瀬のソロパートはサビであるかのような熱量があり、その後に待ち受けるサビのボルテージが高くなると言った話はこれまでに何度もしてきたが、それをライブで見ると私はこう感じた。


 楽しい時間はあっという間だ、と。


 楽しい時間を振り返るとあっという間だったなぁと思ったことのある人は多いだろう。しかしその渦中では、短い時間に色々な経験をして濃密な時間を過ごしていて、この時間が永遠に続くのではという瞬間を感じる人も中にはいるだろう。

 

 その感覚こそタキサイキアなのである。例えば学生時代を思い出してみて欲しい。その当時が楽しかったか辛かったかは人それぞれではあるが、社会に出ることについては遠い未来に感じていた人も多いと思う。しかし現在になって思い返してみると、確かにあっという間であった気もする。もしかして私も学生時代を楽しく過ごしていたような気がしないでもない。

 そんな、自分にもあったのかどうかもよくわからない"青春"なるものを約4分に凝縮したものがタキサイキアなのではないだろうか。

 

 今に存在して今を生きている、今しか出来ないことをしている彼女らを観ていると、自分も青春しているような気になれる追体験が出来る。そんな不思議な感覚にさえ近づけてくれるパフォーマンスがそこにはあったのだと感じた。

 

6.タキサイキアの終わりに

 

 ここまで、様々な角度からタキサイキアという曲が如何にして私を魅了したのか、について語ってきたが、これだという要因は1つではなく、その全てが密接に噛み合って青春の追体験をさせてくれるところにある。彼女らが今歌うからこそ意味のある文脈を生み出すタキサイキアを是非一度聴いてみて欲しい。
 長ったらしく文章を書き連ねてしまったが、ここまでの全てを要約するとこうなる。

 

 やっぱりタキサイキアなんだよなぁ…